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コンピューティングの変革!IOWN構想って何?
はじめに
読者の皆さんは「IOWN(アイオン)」という言葉をご存知でしょうか?
IOWNとは、コンピューティング技術の刷新により、人間社会を持続性のあるものにしていく、という壮大な構想のことです。
いったいどんな技術で、実現すると何が起きるのでしょうか。
今回はそのIOWN構想について、解説していきます。
目次
1.IOWNのコンセプト
2.IOWNを支える技術
3.IOWNが実装された社会の姿
1.IOWNのコンセプト
IOWNは「Innovative Optical and Wireless Network(イノベーティブ オプティカル アンド ワイヤレス ネットワーク)」の頭文字を取って、付けられた名前です。
NTTが提唱し、2030年ごろの実現を目指して、技術開発と実証実験が進められています。
現在のICT(情報通信)技術には、情報量、消費電力の爆発的な増加、プロセッサーの微細化・高速化の限界、インターネット接続機器の過多など、多くの課題があります。
これらを次章で述べる3つの技術により、根本的に解決することを目標としています。
参照や注釈
ビジョン IOWN NTTグループ. https://group.ntt/jp/group/iown/vision.html(参照2024-12-17)
2.IOWNを支える技術
現在のコンピューティングは、主に電気・電子技術によって成り立っています。
しかしこれらは動作周波数や、伝送距離が大きくなると消費電力が、指数関数的に増加します。
それに対して光信号は、動作周波数・伝送距離に対する、消費電力の増加が非常に緩やかです。
IOWNではその特性を利用して、すべての通信や基板上の処理も、光に置き換えようとしています。
このIOWNで使われる3つの技術について説明します。
①APN(All-Photonics Network)
現在データ処理・通信を行うときには主に電気信号が使われていますが、これをすべて光で行おうとするのが、APNです。
現在主に使用されている光通信は、データ処理する際には電気信号に変換されるため、エネルギー効率を低下させていました。
現段階ではデータセンター間の通信を、すべて光で行うことが実現できています。
これからはコンピューター内部のボード間通信、さらにはチップ間通信にも光を使用する段階を目指しています。
➁DTC(Digital Twin Computing)
現実に起きている物理現象を、デジタル世界にそのまま再現する技術がDTCです。
従来の考え方のデジタルツインは、自動車などの機械を個々に再現するものが主流でした。
しかしIOWNで提唱されるDTCでは、人とモノのデジタルツインを掛け合わせたり、工場全体の現象を再現・予測するなどの拡張を目指しています。
また新たな挑戦として、人間の意識や思考の再現も挙げられています。
③CF(Cognitive Foundation)
CFとはユーザー側から見ると、映像や音声、センサーデータなど様々な種類のデータから、必要なものを高速・高精度で取り出せる、基盤技術のことです。
その中には無線ネットワークの技術も含まれます。
現在では無線通信はWi-Fi、5G通信、その他にも業務用の規格など、たくさんの種類が存在します。
これらの中から、ユーザーが置かれている状況に適した通信規格を、自動的に選択して通信を行うことが可能になります。
またサービス提供側から見ると、管理の自動化、自律化、自己進化により、システムメンテナンスを簡素化できるようになります。
例えば地震などの自然災害が起きた時、発生するシステム障害を自動的に復旧させることができます。
それだけでなく台風など、予測が可能な災害については、天気予報などのデータを自動的に取り込み、あらかじめ準備することまで可能になります。
参照や注釈
IOWN 機能と特性 NTT https://group.ntt/jp/group/iown/function/ (参照2024-12-19)
NTTが提唱している「IOWN(アイオン)」というコンセプトについて SAYコンサルティンググループ 2024-11-26. https://saycon.co.jp/archives/neta/nttが提唱している「iown(アイオン)」というコンセ
(参照2024-12-19)
デジタルツインコンピューティングとはなにか NTT 研究開発. https://www.rd.ntt/iown/0003.html
(参照2024-12-19)
IOWN構想のコグニティブ・ファウンデーションとは Qiita 2023-03-16.
https://qiita.com/haystacker/items/b3cc02ff51cc1368c9e8 (参照2024-12-19)
コグニティブ・ファウンデーションとはなにか NTT 研究開発 https://www.rd.ntt/iown/0004.html (参照2024-12-19)
3.IOWNが実装された社会の姿
IOWNが実装されると、社会の姿は大きく変化すると予測されています。
実際にはどのように変化するのかを、見てみましょう
①段階的進化
IOWNは段階的に進化することが期待されています。
IOWN1.0ではAPNにより、一つ目の目標値である「遅延1/200」を達成しました。
これからはIOWN2.0~4.0へと、電力効率100倍、通信容量125倍を目指します。
またAPN化が進められ、サーバ間通信だけでなく、ボード間通信、やがてはチップ内部の通信も光信号に置き換えられます。
➁データセンター(サーバなどのハードウェアを物理的に設置し、運用する施設)の分散化
近年大型データセンターは地価の高い都市部を避けて、地方や郊外へ建設する動きがありますが、大量の電力や水を使用するため、環境への負荷が懸念されています。
ネットワークのAPN化が進めば、中小規模のデータセンターを結び、まるで同施設内にあるかのように動作させることでこれらの問題を解決できます。
③次世代無線通信規格6G
IOWNの技術は、次世代の無線通信規格である6Gを、支えることが期待されています。
モバイル通信網の基地局より先の大容量、低遅延、低消費電力通信は、APNネットワークが担います。
④自動運転車両
IOWNの三つの技術の実装により、完全自動運転が実用化に近づきます。
自動車や街頭に設置されたカメラやセンサーなどから、交通状況を収集・分析しデジタルツイン化することで、すべての自動車の動きを予測します。
自動運転化だけでなく、交通事故ゼロも目指します。
⑤Smart Infra構想
都市の地下には電気、ガス、通信など様々なインフラが通されています。
従来はこれらを扱う役所や業者が、個々に図面などの情報を管理してきました。
これらの情報を統合し、デジタルツイン化しようというのがSmart Infra構想です。
将来的には道路工事の重機と連携し、埋設物を傷つけないように制御したり、劣化予測に基づいた保全計画の立案などが行えるようになります。
参照や注釈
IOWN 活用事例 NTT https://group.ntt/jp/group/iown/cases.html (参照2024-12-20)
NTTとトヨタが描く「モビリティAI基盤」と両社の想い ケータイ Watch 2024-10-31 https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1636028.html
(参照2024-12-20)
2030年実用化に向けて動き出す、NTTの『IOWN構想』とは? デジコン 2024-04-02
https://digital-construction.jp/column/314 (参照2024-12-20)
まとめ
IOWN構想は実現すれば、私たちの生活を大きく変える可能性を持っています。
エネルギー効率の向上により、持続可能なICT環境の構築にも役立ってくれるでしょう。
2030年の実用化が楽しみですね。
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