はじめに

化粧品業界でも、メタバースへの進出が始まっています。

化粧品とメタバース間の親和性が高い要素として、以下に挙げるような利点があります。

①メタバース上でコスメを試すことができる

拡張現実をベースとした仮想メイクアップテストを提供するアプリが登場し、ファンデーション、口紅、マニキュアをオンラインで購入する前に、誰もがさまざまな色合いを試す機会を得ることができるようになりました。

②ライブストリーミングによる商品販売

自社のメタバースを利用してライブストリーミングショッピングを実施できます。コンテンツクリエイター、インフルエンサーなどが主催するライブショッピングショーが誕生しています。

③NFTの発行によるファンの拡大

化粧品ブランドは、ユーザーにNFT(偽造不可の証明書付きのデジタルデータ)を提供することもできます。NFT保有者への特典として限定イベントへの招待や限定商品の先行販売等の取り組みを行うことで、ブランドのファンとの繋がりをさらに強固にすることができます。

以上のことを踏まえて、実際に化粧品業界でメタバースが活用されている例をご紹介していきます。

目次

1.資生堂:ARメイクで複数のアイシャドウを試せる
2.Estée Lauder:ウェアラブルNFTの無料配布
3.花王:ヘアカラー剤の色選びサポートにARを活用
4.Escada:香水の売上向上のためのメタバース
5.PRADA:バーチャルモデル「キャンディ」を起用

1.資生堂:ARメイクで複数のアイシャドウを試せる

資生堂は、自社の総合美容サイト「ワタシプラス」内でARを活用したメイクのシミュレーション機能を導入しました。

「ワタシプラス」は資生堂の公式オンラインショップでもあり、資生堂商品を購入できます。

様々なブランドのアイシャドウを組み合わせてシミュレーションすることができ、手持ちの商品との相性なども、店舗を訪れなくても手軽に確認できることが利点です。

参照や注釈
https://www.coco-ar.jp/media/column/ar-vr-mr
https://www.shiseido.co.jp/wp/index.html

2.Estée Lauder:ウェアラブルNFTの無料配布

大手化粧品ブランドのEstée Lauderは、メタバース上での美容体験を実現するため、メタバース空間で著名な女性アーティストと提携し、同ブランドの人気ナンバーワン美容液に着想を得たオリジナルのウェアラブルNFT(NFTを持つデジタルファッション)を制作しました。

ユーザーは、該当商品のアイコンである「リトルブラウンボトル」の中に入ることで、自分のアバターに輝くオーラを与えるウェアラブルNFTを1つ受け取ることができるようになります。

2022年の期間中、メタバースファッションウィークの参加者は、ウェアラブルNFTを10,000個限定で無料で受け取ることができました。

参照や注釈
https://www.dentsu-pmp.co.jp/contents-bae/wearable-nft

3.花王:ヘアカラー剤の色選びサポートにARを活用

花王は、ヘアカラー剤の色選びのサポートにARを活用する取り組みを進めています。

商品の店頭POPにQRコードを付属し、店頭でスマートフォンを使って簡単にヘアカラー剤の実際の色合いが確認できる仕組みです。

この取り組みにより、店頭で買う前にだいたいのイメージを確認することができるようになり、また毛束見本に使われるプラスチックが削減できたりするといった成果を上げました。

参照や注釈
https://ar-go.jp/media/news/ar-sdgs-ba-tyaru

4.Escada:香水の売上向上のためのメタバース

Escadaは新しい香水の発売および売上向上のためにメタバース空間を作成しました。

仮想空間のコンセプトはシンプルで、新しい香水のボトルカラーである赤とハートが散りばめられた世界は、遊園地のアトラクションのような不思議な世界から着想を得ています。

来場者は、この空間内でミニゲームに参加し、新製品のカラーを使ったデジタルアイテムを獲得したり、実物の香水を入手することができます。また、メタバース上でこれらのデジタルアイテムを使って自分のアバターをドレスアップすることができます。

5.PRADA:バーチャルモデル「キャンディ」を起用

PRADAは、ブランド初のバーチャルモデル「キャンディ」を発表しました。この世界初のバーチャルモデルは同社の香水の名前にちなんで名付けられており、従来のセレブリティやインフルエンサーに対するマーケティング戦略に代わり、Z世代を新たなターゲットにするためのものです。

現在、このバーチャルモデルを使用して、若い消費者とのデジタル交流を活性化し、バーチャル世界がもたらす影響を探求しています。

「キャンディ」は、ブランドが自らのデジタルストーリーを主導するための社内バーチャルモデルとしても活躍しています。

参照や注釈
https://www.prada.com/jp/ja/pradasphere/fragrances/prada-candy/rethink-reality-prada-candy.html

まとめ

以上のように、化粧品業界では「バーチャルモデル」「デジタル資産」を中心にメタバースが採用され始めていることがわかります。

これまで「買って使わないとわからなかった」化粧品を店頭やオンライン上で手軽に試すことができるようになり、購入に対するハードルは確実に下がると考えられます。

主に若い世代向けを狙ってデジタル化に踏み出しており、従来のユーザー層に加えて新たな層を開拓しようとしています。今後の展開に注目です。