企業VTuberとは？活用のメリットや事例を紹介

「企業でVTuberを活用したいけど、具体的にどんなメリットがあるの？」「導入方法や費用がわからない」と悩んでいませんか？

近年、多くの企業がVTuberを活用したマーケティングや広報活動に注目しており、若年層へのリーチ力向上や企業ブランディングに大きな効果を上げています。しかし、導入方法や活用事例についてわからない方も多いでしょう。

この記事では企業VTuberの基礎から導入手順、費用相場、成功事例までをわかりやすく解説します。最後まで読むことで、自社にぴったりの活用方法が見つかるでしょう。

企業VTuberとは

企業VTuberとは、企業が公式に運営するバーチャルキャラクターのことです。Live2Dや3D技術を使って制作されたキャラクターが、動画配信やSNS投稿を通じて企業の商品・サービスを紹介したり、ブランドイメージを伝えたりします。

従来のマスコットキャラクターとの大きな違いは、リアルタイムで動き、話すことができる点です。視聴者と直接コミュニケーションが取れるため、まるでキャラクターが本当にそこにいるかのような体験ができます。

近年では、大手企業から中小企業まで幅広い業種で導入が進んでおり、特に若年層をターゲットとした企業において注目度が高まっています。既存のマスコットキャラクターをVTuber化する企業も多く、新たなブランディング手法として定着しつつあります。

企業がVTuberを活用するメリット

企業がVTuberを導入すると様々なメリットがあります。ここでは主なメリットを、3つ紹介します。これらのメリットを理解することで、自社での活用可能性を検討しやすくなるでしょう。

若年層へのリーチ力が高い

企業VTuberの最大のメリットは、10代〜20代の若年層に対する強いリーチ力です。VTuber文化に慣れ親しんだ世代にとって、バーチャルキャラクターは身近で親しみやすい存在として受け入れられています。

従来の広告手法では届きにくい層に対して、広告臭を抑えた自然な形でブランドメッセージを伝えることができます。特に、アニメやゲーム文化に親和性の高い商品・サービスを扱う企業にとっては、非常に効果的なマーケティングツールとなります。配信内のコメントやアンケートでリアルタイムに反応を得られるため、ユーザーの声を即座に反映したプロモーション改善も可能です。

また、若年層は新しいトレンドへの感度が高く、SNSでの情報拡散力も高いため、話題性のあるコンテンツとして注目を集めやすいのも大きな特徴です。

SNSやYouTubeでの拡散性が高い

VTuberコンテンツは、その視覚的インパクトと話題性により、SNSやYouTubeで拡散されやすい特徴があります。魅力的なキャラクターデザインや印象的な動画は、視聴者の記憶に残りやすく、自発的なシェアを促進します。

特に、TikTokやX（旧Twitter）などの短時間動画プラットフォームとの相性が良く、切り抜き動画やGIFアニメーション、ファンアートなどの二次創作も生まれやすくなります。これにより、企業が直接投稿していない場面でも、自然な形でブランド露出が増加します。

拡散過程では、ユーザーがコメントや引用を加えるため、追加の広告費をかけずに口コミ効果が期待できます。拡散後もアーカイブが検索経由で再生され続けるため、長期的に流入が途切れにくい点も大きなメリットです。

また、配信中の面白いシーンや印象的な発言がバズることもあり、予想を超えた宣伝効果を得られる可能性もあります。

企業ブランドの世界観を表現できる

VTuberは、企業の価値観やブランドイメージを人格として表現できる強力なツールです。キャラクターの設定、性格、話し方、行動を通じて、企業が目指す世界観を視覚的・感情的に伝えることができます。

硬くなりがちな企業メッセージも、キャラクターを通すことで親しみやすく、理解しやすい形で届けられます。また、継続的なコンテンツ配信により、視聴者との長期的な関係性を構築し、ブランドロイヤリティの向上にもつながります。

例えば、技術系企業であれば知的なキャラクター、エンターテイメント系企業であれば明るく活発なキャラクターなど、業界特性に応じたブランディング展開が可能です。

企業VTuberの主な活用シーン

企業VTuberは多様なビジネスシーンで活用されており、その汎用性の高さも魅力の一つです。ここでは代表的な3つの活用シーンについて具体的に解説します。

商品・サービスの紹介動画

最も一般的な活用方法が、商品やサービスの紹介動画での起用です。VTuberキャラクターが実際に商品を使用したり、サービスの特徴を分かりやすく説明したりすることで、視聴者の理解度と関心度を高めることができます。

従来のプロモーション動画と比較して、キャラクターの親しみやすさにより視聴完了率が向上し、商品への好感度も高まる傾向にあります。また、キャラクター独自の視点や表現を通じて、商品の新たな魅力を発見してもらうことも期待できます。

特に、複雑な機能を持つ技術系商品や、使用方法の説明が必要な商品において、VTuberによる解説は非常に効果的です。視聴者は楽しみながら情報を習得でき、商品理解の促進につながります。

また、使い方のデモ、Q&A、比較レビューなど多様な切り口で動画をシリーズ化すれば、潜在顧客もリピーターも飽きずに視聴できます。ライブ配信で寄せられた質問をその場で解決すれば、顧客満足度も高まるでしょう。

広報・採用・社内報のパーソナリティ

企業の広報活動や採用活動においても、VTuberは大きな力を発揮します。企業のニュースや取り組みを親しみやすく伝えることで、ステークホルダーとの距離を縮め、企業への理解と好感度を向上させることができます。

採用活動では、オフィスツアー動画や先輩社員インタビューをVTuberが紹介することで、求職者により具体的で魅力的な企業イメージを伝えられます。特に若手人材の採用において、従来の採用方法では届きにくい層にアプローチできる点が評価されています。

社内報においても、堅い情報をVTuberが親しみやすく伝えることで、社員の関心度向上や情報の理解促進に貢献します。VTuberの活用は、社内のコミュニケーション活性化にも効果的です。

イベントや展示会でのMC・ナビゲーター

リアルイベントや展示会において、VTuberをMCやナビゲーターとして活用する企業も増えています。大型スクリーンに投影されたVTuberが司会進行を行ったり、来場者を案内したりすることで、イベントに特別感と話題性をもたらします。

VTuberがMCを務めることで、人件費の削減効果も期待できるだけでなく、一定品質での進行が保証され、イベント運営の安定性向上にも寄与します。オンラインイベントにおいては、VTuberの存在感がより際立ち、参加者の集中力維持や満足度向上に大きく貢献するでしょう。

さらに、VTuberがMCを担当することで、オンライン配信と組み合わせたハイブリッド形式のイベントでも会場とリモート参加者に同じ体験を提供できます。イベント後にはアーカイブ動画として二次活用できるため、投資効果の最大化も図れます。

実際の企業VTuber活用事例

実際に企業VTuberを導入し、成功を収めている3つの代表的な事例を紹介します。これらの事例から、効果的な活用方法のヒントを得ることができます。

方位かなめ：ジオテクノロジーズ株式会社

方位かなめは、ジオテクノロジーズ株式会社公式の企業Vtuberで、「未来から来た新入社員」という設定を持つキャラクターです。地球を喜びで満たすことをミッションに、YouTubeやTikTok、X（旧Twitter）で広報活動やエンタメ配信を行っています。キャラクターデザインは人気イラストレーターのlack氏が担当。歌やお絵描き、デジタルなものが好きで、方向音痴で地図は欠かせないという一面も。青い海と緑の大地をイメージした髪色が特徴です。

参考：ジオテクノロジーズ株式会社

なるり：進研ゼミ

なるりは、進研ゼミ（ベネッセホールディングス）が展開する公式Vtuber「Vティーチャー」で、2020年6月に活動を開始しました。YouTubeでは勉強に役立つ語呂合わせ暗記ソングや「学校あるある」などの動画、時にはゲーム実況やゲスト講師を招いた課外授業も配信しています。2022年からは「あんり」という相棒も登場し、より多彩なコンテンツを発信中です。進研ゼミの学びを楽しくサポートする存在として、学生から親しまれています。

参考：進研ゼミ「中学講座」

七夜聖りあら：NTTデータ

七夜聖りあらは、NTTデータ バリュー・エンジニアの公式Vtuberで、「新人データアナリスト」として2023年8月にデビューしました。データマネジメントやデータ分析の学習過程をYouTubeなどで配信し、視聴者と一緒にITパスポート試験や統計検定3級の勉強に挑戦しています。実際にITパスポート試験にも合格し、学習系Vtuberとして注目を集めています。合格報告配信は社内外で話題となり、専門分野への親近感を高めました。業務知識の発信とファンコミュニティ形成を同時に実現した好例です。誕生日は2001年10月19日、好きな食べ物はプリンです。

参考：NTTデータ バリュー・エンジニア

企業がVTuberを導入する流れ

企業VTuberの導入を成功させるためには、体系的なプロセスに沿って進めることが重要です。ここでは5つの段階に分けて、導入の流れを詳しく解説します。

目的・ターゲットの明確化

VTuber導入の第一歩は、明確な目的設定とターゲット層の特定です。「なぜVTuberを導入するのか」「誰に向けて情報発信するのか」を具体的に定義することで、その後の全ての判断基準が決まります。

主な目的として、ブランド認知度向上、若年層との接点創出、商品・サービスの理解促進、企業イメージの向上、採用活動の強化などが挙げられます。また、ターゲット層の年齢、性別、興味関心、メディア利用傾向なども詳細に分析します。

この段階で設定した目的とターゲットが、キャラクターデザインや配信内容、プロモーション戦略の方向性を決定するため、社内での十分な議論と合意形成が必要です。

キャラクターデザインの企画・制作

目的とターゲットが明確になったら、それらに最適なキャラクターデザインを企画・制作します。キャラクターの外見だけでなく、性格、口調、背景設定、好き嫌い、行動パターンなど細かく設定し、ターゲットに"推し"として愛される存在を目指します。

既存のマスコットキャラクターがある場合は、そのキャラクターをベースにVTuber化することも可能です。一方、全く新しいキャラクターを制作する場合は、企業のブランドイメージとの整合性を保ちながら、ターゲット層に訴求力のあるデザインを目指します。

• 基本的な外見デザイン（髪型、服装、アクセサリーなど）
• キャラクターの性格と背景設定
• 話し方や行動の特徴
• 企業・ブランドとの関連性
• ターゲット層への訴求要素

企画・制作においては、上記のような内容を具体的に決定しましょう。完成デザインは早期に3面図とガイドラインを作成しておくと、後工程のモデリングやグッズ展開もスムーズに進行します。

Live2D or 3Dモデルの選定

キャラクターデザインが確定したら、Live2Dまたは3Dのどちらでモデル化するかを決定します。それぞれに特徴があり、用途や予算に応じて最適な選択をすることが重要です。

Live2Dは比較的低コストで導入でき、アニメ調の親しみやすい表現が特徴です。一方、3Dモデルは制作費は高くなりますが、VR空間での活用やゲーム連携など、より幅広い用途に対応できます。

社内の制作リソースや既存コンテンツとの統合可否、予定しているコラボやライセンスビジネスの規模感を踏まえて、複数年の収支シミュレーションを行い最適解を選びましょう。両方式を併用するハイブリッドも増えており、状況に応じた柔軟なアップグレード計画を策定すると失敗リスクを抑えられます。

配信環境・制作チームの整備

技術的な環境整備と、VTuber運営に必要な人材・体制を構築します。配信用機材、ソフトウェア、スタジオ環境などのハード面と、企画・制作・運営を担当する人材のソフト面、両方の準備が必要です。

必要な機材として、高性能PC、モーションキャプチャー機器、配信用カメラ、音響機材、配信ソフトウェアなどがあります。また、継続的なコンテンツ制作のため、企画担当、映像制作担当、配信技術担当などの役割分担も明確にします。

社内での体制構築が困難な場合は、外部の制作会社に運営を委託することも可能です。この場合、定期的な打ち合わせや品質管理の体制も重要になります。予備機材の確保やトラブルシューティングフローを事前に用意しておくと、ライブ中断などのリスクを大幅に軽減できます。

プロモーション展開・PDCA運用

VTuberの本格運用開始後は、効果的なプロモーション展開と継続的な改善を行います。配信スケジュールの設定、SNS活用、他のマーケティング施策との連携などを通じて、認知度向上と目的達成を目指します。

定期的な効果測定も重要であり、視聴回数、エンゲージメント率、ブランド認知度調査、コンバージョン率などのKPIを設定し、PDCAサイクルを回しながら運営の改善を続けます。

また、視聴者からのフィードバックを積極的に収集し、キャラクターの成長やコンテンツの改善に活かすことで、長期的なファン獲得につなげることが可能です。

企業VTuberの費用相場と内訳

企業VTuber導入にかかる費用は、求める品質レベルや活用範囲によって大きく変動します。ここでは主要な費用項目と相場について詳しく解説します。

モデル制作（Live2D/3D）

VTuberモデルの制作費用は、選択する技術と品質レベルによって大きく異なります。Live2Dモデルの場合、基本的なモデルで10万円〜80万円、高品質で表情やアニメーションが豊富なモデルでは50万円〜100万円以上が相場となっています。

3Dモデルの制作費用はより高額で、基本的なモデルで20万円〜200万円、映画品質の高精細モデルでは500万円以上になることもあります。また、キャラクターデザインから新規制作する場合は、デザイン費として別途5万円〜30万円が必要です。

動画制作・配信運用

VTuberモデルの制作後は、継続的な動画制作や配信運用にも費用がかかります。月1〜2本の動画制作を外部委託する場合、月額20万円〜50万円以上が一般的です。より頻繁な配信や高品質な動画制作を求める場合は、月額100万円以上になることもあります。

配信環境の構築には、PC・機材費として50万円〜100万円、配信用ソフトウェアのライセンス費として月額数万円が必要です。社内で運用体制を構築する場合は、専任スタッフの人件費も考慮する必要があります。費用の相場をまとめると、以下のとおりです。

企業VTuberに関するよくある質問

企業VTuber導入を検討する際によくある質問と、その回答をまとめました。導入判断の参考にしてください。

まとめ：企業VTuberで新しいマーケティングの可能性を広げよう

企業VTuberは、従来のマーケティング手法では届きにくい若年層との接点を作り、企業ブランディングに新たな可能性をもたらす革新的なツールです。SNSでの高い拡散性と親しみやすいキャラクター表現により、企業メッセージをより効果的に伝えることが可能です。

導入には初期費用と継続的な運用コストが発生しますが、適切な目的設定と戦略的な活用により、投資以上の効果が期待できます。社内にノウハウがない場合でも、外部の専門制作会社のサポートにより、スムーズな導入が可能です。

デジタル化が進む現代において、企業VTuberは単なる流行ではなく、長期的なマーケティング戦略の重要な要素となりつつあります。この記事で紹介した知識を活用して、あなたの企業にも最適なVTuber活用方法を見つけ、新しいビジネスチャンスを掴んでください。